(前回から続く)
〈ACTミニシアター〉で観た映画を、1990年~92年の「映画鑑賞ノート」から拾ってみよう(製作年は略)。この時期の〈ACT〉は、「日本映画をおもしろくした100人」という監督・俳優別の特集を長期にわたって続けていた。 【1990年】 8月2日 小津安二郎『大学は出たけれど』『落第はしたけれど』 『生れてはみたけれど』 11月4日 成瀬巳喜男『めし』『石中先生行状記』 【1991年】 1月19日 クレージーキャッツ『香港クレージー作戦』 『クレージー作戦 くたばれ!無責任』 2月2日 『無責任遊侠伝』『ホラ吹き太閤記』 3月1日 『クレージー大作戦』 6月29日 衣笠貞之助『ある夜の殿様』、山本嘉次郎『馬』 8月24日 市川崑『プーサン』、小林正樹『あなた買います』 【1992年】 5月5日 ロベルト・ロッセリーニ『アモーレ』『無防備都市』 6月13日 小津安二郎『浮草』『小早川家の秋』 ノートを見ると、この時期は池袋の〈文芸座〉〈文芸座ル・ピリエ〉、銀座〈並木座〉、早稲田〈早稲田松竹〉〈パール座〉などにも通い、〈大井武蔵野館〉では「第二回全日本とんでもない映画まつり」という特集で、『東京ディープスロート夫人』『神田川淫乱戦争』『変態家族・兄貴の嫁さん』というカルト三本立てや、『秘録 長崎おんな牢』『発禁・肉蒲団』『くの一忍法・観音開き』という時代エロ三本立てを必死こいて観てたのだから、こっちも元気だったし、名画座にもまだかろうじて活気が残っていたと云えるだろう。 〈ACT〉でいちばん多く映画を観たのは、たぶんこの翌年あたり、入場料が割引になる会員証をつくって観まくったときだと思うが、その頃の記録は見当たらない。大学生から大学院浪人、バイトしながらの大学院生活という長い宙ぶらりんの時期に、〈ACT〉の床に転がって観た映画の何本かは、いまでも脳裏に焼きついている(たとえば、オールナイトで観たマキノ雅裕の『次郎長三国志』)。 昼から二本立ての映画を観て、外に出ると、もう閉める準備にかかっている古本屋に飛び込んで、映画の本や雑誌を買った。ウチに帰ると、さっきの映像を反芻しながら、映画の本を読むのだった。 〈ACT〉には1997年頃まで通い、池袋にできた〈ACT SEIGEI-THEATER〉で、『どろろ』の全話上映なんてのも観たのだが、まず池袋が消え、早稲田の〈ACT〉もいつの間にか映画をやらなくなってしまった。誰に聞いても、「そういえば最近やってないねえ」と云うばかりで、正確なところは覚えてない。今でも看板は残っているのだが。 あそこで働いていたヒトたちはどこに行ったんだろうか? そして、フィルムや図書室(けっきょく一度も利用しなかった)の資料たちは。 【余談】 〈ACT〉の下の郵便局には、まだ当時台数が少なかったATMがあり、親からの仕送りを下ろすためによく利用した。この頃は、土曜日はたしか昼まで、日曜日は完全に使えなかったし、いまみたいに銀行とのネットワークもなかったので、一度下ろし忘れると悲惨なことになった。大学に戻り、部室にいた奴に、二日間しのげるだけのカネ(2000円とか)を借りたこともあった。 メルマガ購読はこちらから http://www.mag2.com/m/0000106202.html ※感想はコメント欄へ。ただし返答はしておりません。ご了承ください。 ------------------------------------- プロフィール 南陀楼綾繁(なんだろう・あやしげ) 1967年、出雲市生。1986-90年、早稲田大学第一文学部に在学。現在、ライター・編集者。著書に『ナンダロウアヤシゲな日々』(無明舎出版)、編著に「チェコのマッチラベル」(ピエブックス)がある。 ▼南陀楼さんのブログ日記はこちら! ナンダロウアヤシゲな日々 http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/
by sedoro
| 2005-11-03 23:13
| 早稲田で読む・早稲田で飲む
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