●6種類の「夏目漱石千円札」
早稲田で生を受け、晩年もこの町で過した大文豪・夏目漱石。その彼を描いた千円札が、昨年10月31日、ついにお払い箱になり、新紙幣の顔は野口英世になった。 最高額札の一万円は、三田の福沢諭吉がそのまま居坐って、またしても小泉率いる慶応閥にしてやられた、と政界の早大出身者たちは騒いでいたが、大蔵卿だったとはいえ、今さら大隈重信ってのも、どんなもんだろう? (蘊蓄その1*「硬貨は、一分銀や一朱銀のような方形ではなく、和同開珎や寛永通宝のような丸形の方が、角がないので摩損が少なく、使い勝手もよい」と提案したのが、早大創設者・大隈重信侯。明治2(1869)年のことである。爾来、わが国の硬貨は、130余年にわたって円形を維持している。) もっとも、小生の如き貧生には、五千円札どころか一万円札なんぞとは、トンと縁遠く、新渡戸さんや福沢さんとはいつもスレ違うだけだった。 もっぱら、この20年間は、夏目さんにはずいぶん親しくしていただいたが、その前は悪名高き伊藤博文韓国統監(もうちょっと云えば、初代首相、枢密院・貴族院初代議長)であった。そのもうひとつ前の、1950年から60年代初頭にかけての聖徳太子さんの千円札は、現在の価値観でいえば一万円ほどの値打ちがあったから、この方にはあまり親しくしてもらった記憶はない。 といった次第で、今回の「早稲田の文人たち」は「夏目漱石」にしようと思ったが、これも、いまさら、こんな大作家をここに採り上げても栓無いことなので、前回につづき「むだ話」の「夏目漱石千円札・追悼特集」(?)としたい。 で、ところで「夏目漱石千円札」は、なにやかやと変更・改刷されて、「6種類」もあった! というのは、皆さんご存じだろうか? ――ちなみに旧「福沢諭吉壱万円札」と「新渡戸稲造五千円札」にも、それぞれ「4種類」のお札があった。 お札には、「記番号」といって、表面の左上と右下に「A000001A」から始まる通しナンバーが打ってあるが、このうちアルファベットは、数字と間違いやすい「I」と「O」を除いて24文字が使われ、「Z900000Z」まで使い切ると「AA000001A」となり、「ZZ900000Z」が最終番号となる。そうすると、この「記番号」は「24の2乗×900000+24の3乗×900000」で、129億6千万枚に使うことが出来る、という計算になる。 ところで、さすが、わが早稲田古本村の大文豪である。その人気は凄まじく、「夏目漱石千円札」はこの「記番号」のすべてを、最初の発行からわずか6年ほどで使い切ってしまった【これが漱石さんの、第1種類目のお札】。 さあ~て困った。といっても過去に、「聖徳太子千円札」のあとを受けた「伊藤博文千円札」の時に、前例があった。――もっともこちらは、これらの「記番号」を使い切るのに13年ほどかかったが……。 (つづく) メルマガ購読はこちらから http://www.mag2.com/m/0000106202.html ※感想はコメント欄へ。ただし返答はしておりません。ご了承ください。 ------------------------------------- プロフィール 松本八郎(まつもと・はちろう) 1942年、大阪生まれ。早稲田在住40年。早稲田にて出版社EDIを主宰。忘れら れた作家たちをこつこつと掘り起こす。「EDI叢書」「サンパン」などを発行 して話題に。「sumus」の同人でもある。 EDI ホームページ http://www.edi-net.com/
by sedoro
| 2005-11-19 23:54
| 早稲田の文人たち
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